ヴェルサイユ宮殿(本館)の見どころ5選
ヴェルサイユ宮殿といえば、キラッキラの大きなシャンデリアが鏡に映ってる部屋が有名だよね。見てみたいな。
ほかにはどんなところが見どころなの?
大きなシャンデリアと鏡で有名なのは〈鏡の回廊〉ね。それ以外も貴重なところばかりだから、全部が見どころ、と言いたいくらいね。
世界遺産のヴェルサイユ宮殿。見学するとなったら、すみずみまで堪能したいですよね。
とはいえ限られた時間。全部をじっくり見て回ることはできないので、今回は中でも特に見逃せないポイントに絞ってお伝えします。
細かい解説は現地で実物を見ながら、ガイドさんのお話やオーディオガイドをぜひ聴いてほしいのですが、旅の前に大まかな予備知識を入れておくと理解が深まって、限られた時間でもより堪能できます。
ツアーの場合でも、ガイドさんの説明は意外と速いですから、事前に基礎知識を頭の中に入れていったほうが見学も充実しますね。
ヴェルサイユ宮殿の見学は、大きく分けて以下の3つのエリアが可能です。
- 宮殿本館
- 庭園
- 離宮エリア(ドメーヌ・ド・トリアノン)
それぞれのエリアに、見どころがたくさん。この記事では宮殿本館に絞って解説します。
宮殿本館の見どころ5選
おおまかなイメージをつかんでいただけるように、ざっくりと見取り図を描いてみました。宮殿2階です。
①王室礼拝堂 La Chapelle Royale
ルイ14世の時代、1710年に完成。
当時は毎朝10時にここでミサが行われました。2階席は王族や要人専用で、1階にはそれ以外の信者を受け入れていました。
ルイ16世とマリー・アントワネットの結婚式もここで執り行われました。1770年5月16日のことです。
②王の大居室群 Les Grands Appartements
17世紀末~18世紀末の約100年間、ヴェルサイユ宮殿は王侯貴族の住まいであり政治の中心でした。
その中で国王がふだんから使っていた部屋は〈国王の大居室群〉と呼ばれています。下記の8部屋に〈鏡の回廊〉を加えた部分です。
- ヘラクレスの間
- 豊穣(ほうぎょう)の間
- ヴィーナスの間
- ディアナの間
- マルスの間
- メルクリウスの間
- アポロンの間
- 戦争の間
- 平和の間
「アポロン」とか「ヴィーナス」って、ギリシャ神話の神だよね。どうしてそういう名前が付いてるの?
それぞれの部屋に描かれている天井画や絵画から部屋の名前が付けられてるの。例えば〈ヴィーナスの間〉には天井に『神々と強大国を従わせるヴィーナス』(ウアス作)が描かれているわよ。
また、例えばアポロンはギリシャ神話の太陽神。一方、ルイ14世が〈太陽王〉と呼ばれているのは有名な話ですね。ルイ14世は自らを太陽神アポロンと同一視することを好みました。
えっ…! オレ様感ハンパないな…
ま、まあね…(苦笑)
当時は絶対王政の時代。中でもルイ14世の権力は絶大だったそうよ。
ルイ14世が統治していた17世紀のフランスでは、ギリシャ・ローマ神話がとても大切にされていました。〈古典主義〉といって、イタリアのルネサンス文化の影響を大きく受けています。17世紀当時、絶対的な権力を握っていたルイ14世は、自身をギリシャ神話の神々になぞらえて宮廷画家に描かせました。
③鏡の回廊 La Galerie des Glaces
例のシャンデリアと鏡の部屋だね。
そう。宮殿が造られた17世紀当時は、鏡はとても貴重だったんだって。
それをふんだんに使って壁一面を鏡にしちゃうなんて、どれだけ富と権力があったんだろう。
そう、そこがポイント。当時の王ルイ14世は、この〈鏡の回廊〉を富と権力の象徴にしたかったの。多少無理をしてでも、国内外に自分の強さを示したかったっていうことね。
ただし、その裏で国民は貧しい暮らしを強いられたそうよ。そのことは心に留めておきたいところね。
等間隔に設置されたシャンデリアが鏡に映って、まるで夢の世界にいるような美しさ。さらにこの回廊の窓からは広大な庭園が一望できて、これ以上ないほどの絶景です。
ルイ14世は庭園の出来ばえにとても満足していたといいます。毎日この〈鏡の回廊〉から庭園を眺めては悦に入っていたのかも…と歴史に思いを馳せながら見学するのもいいですね。
またルイ14世は、毎朝ここを通って礼拝堂に向かいました。その姿を一目見ようと、宮廷人がこの回廊に集まったといいます。
仮面舞踏会や盛装舞踏会(王家の結婚式などで行われる)もこの〈鏡の回廊〉で行われていました。
とっても豪勢だったんだろうね。
この〈鏡の回廊〉がルイ14世の時代に実際どんなふうに使われていたのかが分かる映画が、2024年2月2日から公開されています。
ジョニー・デップ主演のフランス映画『ジャンヌ・デュ・バリー』です。
実際にヴェルサイユ宮殿で撮影されたそうです。
④王妃の寝室 La Chambre de la Reine
白を基調に、薔薇などの花の刺繍が至る処にあしらわれた華やかな部屋。
ルイ16世の王妃マリー・アントワネットなど、3人の王妃がここを寝室として使いました。
何より驚くのは、出産が一般公開されていたことです。国王の後継者を産むわけですから、間違いなく王妃が産んだ子だということを誰かが見届ける必要は確かにあるとは思いますが…。
どうやら特にマリー・アントワネットの出産は、野次馬精神で見に行った人も多かったようです。
王妃はつらいね…
マリー・アントワネットの初めてのお産には、狭い部屋に100人もの人たちが詰めかけたそうよ。
えっ!満員電車みたいじゃない!そんな中で出産したの?
そう。きっととんでもない大混乱の中でのお産になったでしょうね…。マリー・アントワネットは出産直後に気を失ってしまったそうよ。
壮絶すぎて絶句…
このエピソードは、マリー・アントワネットの侍女だったカンパン夫人の『回想録』に書かれています。
⑤王の寝室 La Chambre du Roi
王妃の寝室よりもおごそかな雰囲気だね。天蓋も立派だなあ。
〈王の寝室〉は東向き。ちょうど朝日が射し込みます。まさに〈太陽王〉のための部屋ですね。
ルイ14世はこの部屋で亡くなったそうです。
それからもう一つ、この部屋にはエピソードがあります。
1789年に起こったフランス革命の中で、10月には〈ヴェルサイユ行進〉と呼ばれる事件がありました。飢えに苦しむ市民たちが蜂起してヴェルサイユ宮殿にやって来て、ルイ16世一家を宮殿からパリに連行した事件です。
宮殿に押し掛けた市民たちの前にルイ16世と王妃マリー・アントワネット、そしてその子どもたちが姿を見せたのが、この〈王の寝室〉のバルコニーでした。
下の画像のちょうど真ん中、2階のバルコニーですね。中庭で、ぜひ見てみてください。
この記事では、ヴェルサイユ宮殿の中でも特に見学しておきたい
- 王室礼拝堂
- 王の大居室群
- 鏡の回廊
- 王妃の寝室
- 王の寝室
について解説しました。
贅(ぜい)の限りを尽くして造られた宮殿は、400年以上たった今でも見る者の目を驚かせます。
ただ、その裏には国民の貧しい暮らしがあり、その怒りを買って処刑されてしまった国王一家の悲劇があります。
その歴史の光と影を知ってから宮殿を見学すると、綺麗なシャンデリアや天井画もきっと違った見え方がするはずですね。
ヴェルサイユ宮殿が〈宮廷〉として使われていた時代について、下記の記事で分かりやすく解説しています。旅の予習に、ぜひご一読ください。
Bon voyage!(ボン・ボワヤージュ!)